ここ1年くらいの間に読んで面白かった漫画を紹介します(後)
続きです。好き勝手に書いていきます。
プレゼン能力が皆無ですが熱量で伝わってくれればとは思います……。
ということで8作品、7300字、前回とは違いちょっと好みが偏っている後編ですが、よろしくお願いします。
鼓田(こだ)ミナレ、20代独身。札幌在住、スープカレー屋勤務。
ひょんなことからギョーカイ人の中年男性にダマされ、ワケも分からずラジオDJデビュー。カレー界とラジオ界の覇道を歩むべく奮闘はしないが、真の愛と幸せと享楽を求めてオンナは戦い続ける、に違いない。
さあさあさあ、波よ聞いてくれ!!!
誰かに紹介する時に、あらすじを端的にまとめようとしても「スープカレー屋で働いていた女性がなんやかんやあってラジオDJとして奮闘する話」としか言えなくて、正直そのあらすじだけの情報だと、おもしろいのか?という疑問はわいてくるのですが、超おもしろいんです。めちゃくちゃ、おもしろいんですよ。
人生に負けたホームレス化野元の前に現れた謎の少女ヒヨスは、「食事」を生きる目的として星々を旅する宇宙から来た奇妙な存在だった。不思議な箸を片手に、人から廃棄家電まで際限なしに何でも食べてしまう彼女のおかげで、化野の周りには荒唐無稽な騒動と濃い人間が次々と集まってくる。
グルメ漫画数多あれど、食べたものを吐き出すグルメ漫画、探しても見つからないと思います。
ごはんあんまり食べません。リヤカーや冷蔵庫や犬を食べます。グルメと言うよりは悪食。何でも食い。そして、吐く。吐いた後にそれまで食べていたものがすべて融合(キメラ化)して出てくるという混沌な、突飛な設定。
これだけでもインパクト大きく混乱するのですが、マニアックなサブカルネタ、時事ネタ、風刺ネタを思う存分隙間無く好き勝手に盛り込んでいてネタのラッシュでせわしない。正直、自分は2回読み返しても4分の1ほども拾いきれていないと思いますし、いろいろと他のもの見回って知識つけ見聞広げた後に読み返すたびに新たな発見があり何度も楽しめる。
更に、この漫画一番の推しのポイントですが、ヒロインのヒヨスが、かわいい。
そんなかわいいヒヨスがおいしそうに食べ、苦しそうに吐く。嘔吐フェチの道を開拓してくれます。
ストーリーは振り幅激しく、緻密な笑いどころや小ネタの多さに圧倒されますが、最終的に壮大になりつつ、うまい風に収束して行くので、とんでもないオチがきても納得させられてしまう力がある。作者が好き勝手やりつつもうまく消化しつつあるのでとても勢いある逸品となっています。
【おひっこし/沙村広明】
【幻想ギネコクラシー/沙村広明】
【シスタージェネレーター/沙村広明】 他
他、今年実写化された無限の住人(すみません僕はまだ読み途中です)、ベアゲルターなど代表する基本グロ/エロのイメージが強く、短編集であるシスタージェネレーター、幻想ギネコクラシーに関しては、好き勝手やっていて、得意の漫才のような会話劇、かと思えば男気溢れるハードボイルドな物語、クールに騙し合う西部劇、耽美で美しい物語、短めな風刺ネタ、不条理ギャグ、ナンセンスな話からSF、荒唐無稽な話から心温まるいいお話、獣姦や死姦、などジャンルが多彩に幅広く、いろんな方向から楽しませてくれて、読む人を選ぶ話が多いけど、どこかで気に入る話があるとは思います。
個人的に短編集の中からお勧めとして、幻想ギネコクラシー2収録の「ぷれぐなぷれぐな」が会話も物語の運びもすごく面白く前述の、波よ〜やおひっこし〜を彷彿とさせる楽しさでありハートフルであり好きなのでオススメ。一方でシスタージェネレーター収録の「エメラルド」はハードでクールな西部劇で心震える格好良さでオススメ。見事に方向性がまったく違う漫画なのにどちらもすごく面白い。
あと、基本的には目つきが悪い美女が満載で、目つきが悪い美女フェチとっては至福となっています。
白泉社のホームページで幻想ギネコクラシー収録の「鳳梨娘」が丸々読めるので気になった方はぜひ。
シスタージェネレーター 沙村広明短編集 (アフタヌーンコミックス)
- 作者: 沙村広明
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/09/06
- メディア: Kindle版
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【宝石の国/市川春子】
今から遠い未来、僕らは「宝石」になった。彼ら28人は、襲い掛かる月人に備えるべく、戦闘や医療などそれぞれの持ち場についていた。月人と戦うことを望みながら、何も役割を与えられていなかったフォスは、宝石たちを束ねる金剛先生から博物誌を編むように頼まれる。漫画界で最も美しい才能が描く、戦う宝石たちの物語。
引用元 宝石の国 / 市川春子 - アフタヌーン公式サイト - モアイ
【さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ/永田カビ】
「心を開くって、どうするんだっけ…」28歳、性的経験なし。生きづらい人生の転機。高校卒業から10年間、息苦しさを感じて生きてきた日々。そんな自分を解き放つために選んだ手段が、「レズビアン風俗」で抱きしめられることだった──自身を極限まで見つめ突破口を開いた、赤裸々すぎる実録マンガ。pixiv閲覧数480万超の話題作、全頁改稿・描き下ろしで書籍化。
インパクトが強く、印象的で記憶に残りやすいタイトル。レズ風俗。
てっきり性癖こじらせてレズ風俗に潜入するレポ漫画と思い込んでましたが読んでみると全くの別物で、〝さびしすぎて〟という部分の方がこの漫画の根底的な内容となっています。
家族の期待に縛られて自分を見失ってしまったり、生き辛さを抱えて他人に心を開けなかったり、世間や他人とのズレに悩み内罰的になったり、漠然とした不安や行き場のないつらさや、正体不明の憂鬱に押しつぶされて息苦しくなったり逼迫したりして心に穴があき、どうしようもない寂しさを抱え誰かに大切にされたい、自分を許したい、誰かに認められたい、心を開けるようになりたいと、もがくように縋るようにたどり着いた先のレズ風俗であり、エロさよりも、成長の記録の漫画となっています。あるいは闘病記のような。
自己肯定感が低かったり、いつまでも晴れない闇を抱えたり、生きるのがつらかったり、さみしかったりする人には刺さりまくるし、そうでない人にもどこかしら共感できる箇所があると思います。
うまく言語化できないもやもや、焦燥感や劣等感や葛藤、すべての負の感情をうまく描かれていて、自分の中の説明がつかない心情や暗闇を、可視化されて整理される事によって非常に救われたかのような気分になりました。
とにかく、言葉にできない負の感情をポップな絵柄で赤裸々におどろおどろしく丁寧に描写されており、自分自身の気持ちに整理がつき理解できるようになる。共感もできるし、共感ができない人にとっても、そういう人たちを理解する手助けになる。
レズ風俗はあくまでおまけです。おまけですけど詳しく描写されているので興味に応えてくれるので満足できます。そんな一冊…。
絵に描いたように「フツー」な深町くんは、高校最後の日にあこがれの山田さんに告白! 付き合うために彼女が出した条件は「ピンボールのハイスコア」を超えること!!深町くんの厳しくも険しいピンボール道が始まった!!!
どんなにマイナーでも漫画になっていない題材などないというぐらいに、様々なテーマを漫画は網羅していますが、この漫画の題材はピンボールです。
正直、読む前は、「ピンボール題材か〜地味そう…」と思っていたのですが、読後はそんな意見もう言えない。言っていた自分が恥ずかしいぐらいに、ピンボールってこんな熱くなれるんだ!という衝撃と興奮。
主人公も最初、ピンボール…?よくわからないな、という同じ目線でいるからこそ、感情移入しやすく、ピンボールの魅力にとりつかれ、のめり込んで行く疑似体験を同じように味わえます。
主人公深町くんが熱中しはじめた時の心境変化、盛り上がり具合を見ていると興味が無かったピンボールに虜になっていく。
何より、盛り上がってくると漫画自体の勢いと熱とスピードも上がってきてテンション最高潮に。なんでピンボールに一生懸命になってるんだ…?という冷ややかに見ていた自分が過去になる瞬間はとても心地よく、感動的で感無量です。ランナーズハイが如く、読み進めると急激に気分が高揚して恍惚感で気持ちよくなる瞬間があり凄く良い。
わくわくするし、何より爽快感があり、純粋に楽しい。
プレイに集中し没入しながらまわりの騒音や声援が聞こえなくなるシーンがあるのですが、その静かになるシーンがすばらしく美しくて読みながら実際に静寂が訪れたかのような透明さを感じる。
とにかく一緒にテンションが上がり一緒にのめり込んで行く体験ができる楽しさがあり、まわりもあたたかい人ばかりで、心もあたたかくなるとても素敵な漫画です。
以上です。
ん〜〜、自分がおもしろいと思ったものはなるべくたくさんの人に好きになってもらいたいからせっせとこんな長文書いてしまっているけど、もっと簡潔にしたかったですね。